【核物理】放射性崩壊

【核物理】放射性崩壊

物理・数学ノート > 核物理

■はじめに

ここでは、放射性崩壊と、それに関連するいくつかの概念について説明する。



■放射性崩壊とは

不安的な原子核が、高エネルギー粒子の放出を伴い自発的に他の核種に変化することを、放射性崩壊(radioactive decay)という。 天然に存在する核種の場合、一般に、$\alpha$崩壊$\beta$崩壊、そして$\gamma$崩壊の3つの崩壊の仕方がある。

$\alpha$崩壊では、$\alpha$粒子(ヘリウム4の原子核$^4_2$He)が放出される。 $\beta$崩壊では、中性子が陽子に変化し、$\beta$線(電子)とニュートリノが放出される。 $\gamma$崩壊では、励起された原子核が$\gamma$線(光子)を放出して崩壊する。 このとき、$\alpha$崩壊や$\beta$崩壊とは異なり、原子番号や質量数は変わらない。 つまり、核種自体は変化しない。


■崩壊定数

ある時間間隔において原子核が崩壊する確率は、核種ごとに一定であり、ある原子核の数$N(t)$の時間変化率、すなわち崩壊率は、定数$\lambda$を用いて \begin{align} \label {eq:dNdt} -\frac{dN}{dt}=\lambda N \end{align} で与えられる。 この$\lambda$は崩壊定数(decay constant)と呼ばれる。

(\ref{eq:dNdt})の解は、原子核数の初期値を$N_0$とすれば \begin{align} N(t)=N_0 e^{-\lambda t} \end{align} と得られるから、崩壊率は \begin{align} -\frac{dN}{dt}=\lambda N_0 e^{-\lambda t} \end{align} と書き直せる。 これより、時刻$t$から$t+dt$の間に崩壊を起こす原子核の数は \begin{align} -dN=\lambda N_0 e^{-\lambda t}dt \end{align} となるため、時刻$t$から$t+dt$の間に崩壊を起こす確率を \begin{align} \label {eq:pdt} p(t)dt= \frac{-dN}{N_0}=\lambda e^{-\lambda t}dt \end{align} で見積もることができる。


■半減期と平均寿命

崩壊によって、原子核の数が初期値の半分になるまでの時間$t_{1/2}$を半減期(half-life)という。 これは、定義より \begin{align} N(t_{1/2})=\frac{N_0}{2}=N_0e^{-\lambda t_{1/2}} \end{align} であるから、対数を取って整理することで \begin{align} \label {eq:half} t_{1/2}=\frac{\ln 2}{\lambda} \simeq \frac{0.693}{\lambda} \end{align} と計算できる。


また、崩壊確率(\ref{eq:pdt})を用いると、原子核の平均寿命(mean lifetime)$\tau$が \begin{align} \tau \equiv \int_0^\infty dt t p(t) = \frac{1}{\lambda} \end{align} と計算できる。 (\ref{eq:half})より半減期との関係が \begin{align} t_{1/2}=0.693 \tau \end{align} であることもわかる。


■放射能

放射能(radioactivity)は、単位時間あたりに起こる崩壊数で定義される。 かつては、一般にラジウム1gが1秒間に起こす崩壊の数から定義されるキュリー(Ci)という単位が用いられていたが、現在国際単位系(SI)では、毎秒あたりの崩壊数を表すベクレル(Bq)が用いられる。 キュリーとベクレルの間には \begin{align} 1 \ \text{Ci} = 3.7\times 10^{10} \ \text{Bq} \end{align} の関係がある。


■参考文献


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