【力学】角運動量

【力学】角運動量

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ジャイロスコープ:角運動量の性質を利用した興味深い装置/おもちゃ。

■はじめに

ここでは、基本的な力学量の1つである角運動量とその保存則について説明する。 まず角運動量保存則を身近に感じられる例であるスケート選手の回転や、ジャイロ効果を用いたジャイロスコープの原理を通して平易な解説し、その後具体的な数式を用いた説明を行う。


■スケート選手の例

フィギュアスケートの選手は腕を伸び縮みさせることで回転の速さをコントロールするが、なぜその方法で回転の速さが変わるのだろうか? この仕組みの背後にある原理が、角運動量保存則というものである。

角運動量は、回転の腕の長さ($\bm{x}$)と、運動量($\bm{p}$)という量で決まるベクトル量(大きさと向きを持つ量)で、角運動量を表すベクトルは、右手の手首を、回転の半径に沿った向きから、回転の方向に曲げたときに親指が向く方向を指す。

図1:角運動量($\bm{L}$)の向きは、右手の指先を回転の腕($\bm{x}$)の向きに向け、運動量($\bm{p}$)の向く先にクイっとやったとき、親指が向く方向。

角運動量は、回転に影響を与える力が働いていなければ、向きも値も変化しない。これを角運動量保存則という。 これを念頭にスケート選手の回転について考えてみよう。 簡単のために、氷との摩擦や空気抵抗などは無視できるとし、回転軸も固定されているとして話を進める。

これらの条件の下では、角運動量の大きさは(腕の長さ)×(運動量の大きさ)で決まり、その値は変化しないから、腕の長さを伸ばせば、その増分を打ち消す形で運動量は減少するし、反対に腕を縮めれば、運動量は増して回転が速くなる(腕というのは文字通りの腕ではなく、回転の半径と思ってもらえればいい)。


図2:回転しながら腕を縮めた姿勢から伸ばした姿勢に変えると、腕の長さが$\bm{x}$から$\bm{x}'$、運動量が$\bm{p}$から$\bm{p}'$と変化するが、角運動量は変化しない。

これが、スケート選手が姿勢を変えることで回転速度をコントロールできる理由である。


■ジャイロ効果とジャイロスコープ

●ジャイロ効果

角運動量保存則の影響を実感できるもう一つの例が、ジャイロ効果と呼ばれるものだ。 スケート選手の例は軸の向きを固定していたので、角運動量の大きさだけに関するものだったが、今度は角運動量の方向の変化も関係してくる。


角運動量保存則を簡易的な数式を使って表現すると \begin{align} \label {angcons} \frac{\Delta \bm{L}}{\Delta t} = \bm{N} \end{align} となる。 ここで$\Delta L$は角運動量の変化分、$\Delta t$はその変化にかかった時間、そして$\bm{N}$は力のモーメント、あるいはトルクと呼ばれる量で、回転に影響を与える力の能率を表している(力のモーメントについては、コチラの記事参照)。 そして、この力のモーメントの方向は、図1で運動量を力に変えた場合に角運動量の向きに対応する方向、すなわち腕の方向から力の向く先に右手首を曲げたときに親指が向く方向となる。

回転する車輪を、軸を片側だけ吊ってぶらさげた図3のような装置を考える。軸が片側しか吊られていないため、重力によって車輪が傾こうとする。

図3:回転する車輪の軸の片側だけが宙に吊られている。

すると、車輪には図4のように、力$\bm{F}$がかかる。そこで、上の説明の通り、力のモーメントが、腕の向きと力の向きに直交する方向に生じる。

図4

角運動量保存の式(\ref{angcons})より \begin{align} \Delta \bm{L} \propto \bm{N} \end{align} であるから、この時の角運動量の変化の方向は、力のモーメントに沿った方向を向く($\propto$は「比例する」ということを表す記号)。 よって車輪は角運動量ベクトルがモーメントを追いかける方向に回転する。

図5:変化後の角運動量を$\bm{L}'$と表している。

このように、角運動量保存の性質に由来して、外力に対しても姿勢を維持する現象をジャイロ効果と呼ぶ。また、回転軸が首を振るように回転する運動を、歳差運動という。


●ジャイロスコープ

ジャイロ効果を体感できるおもちゃとして、ジャイロスコープというものがある。これは、元々はジャイロ効果などを利用して、回転する物体の力学的性質を測る目的で開発された装置であるが、単に実用的な装置としてではなく、回転運動の興味深い振る舞いを鑑賞するおもちゃとしても人気がある。

その他物理おもちゃはコチラのページから。

■角運動量の定義

最後に、角運動量の形式的な定義と力のモーメントとの関係を示しておこう。

原点$O$周りの質点の角運動量$\bm{L}$は、その質点の位置ベクトル$\bm{r}$と線形運動量$\bm{p}$を用いて \begin{align} \bm{L} = \bm{r}\times \bm{p} \end{align} と定義される。

この量の時間微分を取ってみると \begin{align} \label{eq:dL1} \frac{d}{dt}\bm{L} = \frac{d\bm{r}}{dt}\times \bm{p} + \bm{r}\times \frac{d}{dt}\bm{p} \end{align} となる。 ここで、位置ベクトル$\bm{r}$の時間微分は速度$\bm{v}$であることと、運動量はそれと質点の質量$m$を用いて$\bm{p}=m\bm{v}$と表せること、および運動量の時間微分は力$\bm{F}$に等しいことを使うと(\ref{eq:dL1})は \begin{align} \frac{d}{dt}\bm{L} = m(\bm{v}\times \bm{v}) + \bm{r}\times \bm{F} \end{align} と書き直せる。 右辺1項目は外積の性質から0で、2項目は力のモーメント$\bm{N}$と等しいことを使うと結局 \begin{align} \frac{d}{dt}\bm{L} = \bm{N} \end{align} という関係式が得られる。 これより、もし外力が働いておらず、$\bm{N}=0$であれば角運動量は保存することがわかる。


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コメント

GYROMAN さんの投稿…
せっかく内容が素晴らしいのに、テドコー社のジャイロスコープを模した(パクった)おもちゃを動画やAmazon販売サイト紹介されているのは残念でした。レビューを見ても精度が出ていないとの指摘です。やはり精度の高い日本製こそ紹介されたらいかがでしょうか?
匿名 さんのコメント…
図4の力の矢印Fはエラーではないでしょうか.トルクの計算式N=xかけるFもエラーではないでしょうか.図5のrとFの矢印もエラーではないかと思っています.式(5)にもエラーがありそうです.投稿者の勘違いであれば,ご教示戴ければ幸いです.
匿名 さんのコメント…
5月10日投稿した老人です.式(5)を訂正して戴き有難う御座いました.図の訂正は時間がかかるのでしょうか.出来れば,正しい位置に,正しい力やモーメントを与えて戴ければ幸いです.

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